EA用PCのUPSの選び方|消費電力から容量とバックアップ時間を計算
自宅のPCでEAを動かしていると、停電や瞬間的な電圧の低下で、PCが突然落ちることがあります。UPS(無停電電源装置)は、停電の時にバッテリーから数分〜数十分の電気を送り、その間にPCを正しく終了させるための機器です。選ぶ時に必要なのは、つなぐ機器の消費電力から、UPSの容量(VAとW)と、バックアップできる時間を出すことです。この記事では、オムロンのカタログの選定方法と仕様書の表を使い、消費電力ごとの目安をPythonで計算した結果を紹介します。
(確認:オムロン「無停電電源装置(UPS)総合カタログ 2025年6月版」の選定方法、BY120S/BY80S/BY50S/BY35S の製品仕様ページ・仕様書(K1L-Z-09397O)・データシート。確認日:2026年10月21日。筆者はUPSを使った検証をしていません。特定の機種を勧めるものではなく、計算の例として1つのシリーズの公表値を使っています)
容量の出し方(オムロンのカタログの選定方法)
カタログの選定方法では、つなぐ機器すべての総容量を、VA(皮相電力)とW(有効電力)の両方で計算し、VA・Wともに、それより大きいUPSを選ぶ、とされています。機器の表示がW(ワット)の場合の式は次のとおりです。
- VAの総容量 = W ÷ 力率
- Wの総容量 = W(そのまま足す)
- 力率が分からない時は、VAの計算では0.6、Wの計算では1.0で計算する
また、カタログには、PFC回路(力率改善回路)を内蔵したPCに矩形波出力のUPSをつなぐと問題が起きる場合があること、最近のデスクトップPCの電源や、「80PLUS」のロゴの付いた電源はほぼすべてPFC回路を内蔵していることが書かれています。デスクトップPCなら、出力が正弦波のUPSを選びます。計算に使うBYシリーズは、データシートで出力波形が正弦波(通常時・バックアップ時とも)とされています。
消費電力の決め方
UPSにつなぐのは、停電の間も動いていてほしい機器だけです。EAのPCなら、PC本体のほかに、ルーター・回線の機器(ONUなど)をつながないと、停電中にネットにつながりません。消費電力は、コンセントに挟む電力計で、普段の動作の値を測るのが確かです。電源ユニットの定格(例:650W)は最大の値で、普段の消費電力ではありません(EA用PCの電気代はいくらか)。
コード:容量とバックアップ時間の目安
# 消費電力(W)から、UPSに必要な容量(VA・W)と、オムロン BYシリーズのバックアップ時間の目安を出す
# 容量の計算はオムロンのカタログの選定方法:機器の表示がWなら、VA総容量 = W ÷ 力率、W総容量 = W(不明な力率は VA計算で0.6、W計算で1.0)
# バックアップ時間は、仕様書の「バックアップ時間表」(周囲温度20℃・新品初期の参考値)の間を直線で補った筆者の目安
SPEC = { # 型式: (定格VA, 定格W, {負荷W: 分})
"BY35S": (350, 210, {20: 90, 40: 50, 60: 30, 80: 20, 100: 15, 120: 12, 150: 9.5, 180: 7.5, 210: 6}),
"BY50S": (500, 300, {20: 90, 40: 50, 60: 30, 80: 20, 100: 15, 120: 12, 150: 9.5, 180: 7.5, 210: 6, 240: 5, 270: 4, 300: 3.5}),
"BY80S": (800, 500, {20: 170, 50: 100, 100: 40, 200: 15, 300: 9, 400: 6, 500: 4}),
"BY120S": (1200, 720, {20: 300, 50: 130, 100: 63, 200: 27, 300: 17.5, 400: 11, 500: 8, 600: 5.5, 720: 4}),
}
def backup_minutes(table, w):
pts = sorted(table.items())
if w < pts[0][0] or w > pts[-1][0]:
return None
for (w1, m1), (w2, m2) in zip(pts, pts[1:]):
if w1 <= w <= w2:
return m1 + (m2 - m1) * (w - w1) / (w2 - w1)
return pts[-1][1]
for load in (60, 100, 150, 250): # 例:PC本体+モニター+ルーターなどの合計(W)
need_va, need_w = load / 0.6, load / 1.0
print(f"負荷 {load}W → 必要な容量 {need_va:.0f}VA・{need_w:.0f}W 以上")
for name, (va, wmax, table) in SPEC.items():
if va >= need_va and wmax >= need_w:
m = backup_minutes(table, load)
print(f" {name}({va}VA/{wmax}W)バックアップ約 {m:.1f} 分")
else:
print(f" {name}({va}VA/{wmax}W)容量が足りない")
計算の結果(Python 3)
負荷 60W → 必要な容量 100VA・60W 以上
BY35S(350VA/210W)バックアップ約 30.0 分
BY50S(500VA/300W)バックアップ約 30.0 分
BY80S(800VA/500W)バックアップ約 88.0 分
BY120S(1200VA/720W)バックアップ約 116.6 分
負荷 100W → 必要な容量 167VA・100W 以上
BY35S(350VA/210W)バックアップ約 15.0 分
BY50S(500VA/300W)バックアップ約 15.0 分
BY80S(800VA/500W)バックアップ約 40.0 分
BY120S(1200VA/720W)バックアップ約 63.0 分
負荷 150W → 必要な容量 250VA・150W 以上
BY35S(350VA/210W)バックアップ約 9.5 分
BY50S(500VA/300W)バックアップ約 9.5 分
BY80S(800VA/500W)バックアップ約 27.5 分
BY120S(1200VA/720W)バックアップ約 45.0 分
負荷 250W → 必要な容量 417VA・250W 以上
BY35S(350VA/210W)容量が足りない
BY50S(500VA/300W)バックアップ約 4.7 分
BY80S(800VA/500W)バックアップ約 12.0 分
BY120S(1200VA/720W)バックアップ約 22.2 分
バックアップ時間は、仕様書の表(20W・40W…などの負荷ごとの分数)の間を、筆者が直線で補った目安です。仕様書には、周囲温度20℃・新品の初期状態での参考値で、実際の値はバッテリーの寿命や温度で変わる、と書かれています。
| 型式 | 容量 | メーカー希望小売価格(税込) | 交換バッテリー |
|---|---|---|---|
| BY35S | 350VA/210W | 39,490円 | BYB50S 18,260円(BY50Sと共通) |
| BY50S | 500VA/300W | 45,980円 | BYB50S 18,260円 |
| BY80S | 800VA/500W | 75,570円 | BYB80S 37,950円 |
| BY120S | 1200VA/720W | 98,340円 | BYB120S 49,500円 |
価格はデータシートのメーカー希望小売価格で、販売店の価格は違います。データシートには、バッテリーの寿命は4〜5年と書かれています。UPSは、本体の価格に加えて、数年ごとのバッテリー交換の費用がかかる機器です。
読み方:何分あればよいか
- PCを正しく終了させるだけなら、Windowsの終了にかかる時間+余裕の数分で足りる。100Wの負荷なら、BY35S・BY50Sでも約15分(表の値)
- 短い停電の間、EAを動かし続けたいなら、停電の長さの見込み次第。100Wで約40分(BY80S)、約63分(BY120S)と、容量の大きい機種ほど長い
- ルーター・ONUも一緒につなぐと、その分だけ負荷が増え、時間は短くなる
停電中にEAを動かし続けても、回線の機器や、地域の通信設備が止まれば、取引サーバーにはつながりません。長い停電への備えとしては、自宅のPCよりVPSで動かす選択肢もあります(MT5用Windows VPSの選び方)。
停電の後に確かめること
- PCが正しく終了したか、突然落ちたかは、イベントログで分かる(予期しないシャットダウンを調べる方法)
- 電気が戻った時にPCを自動で起動させたいなら、BIOSのAC電源復帰の設定(停電後にPCを自動で起動する設定)
- 外出先から再起動する方法は外出先からEA用PCを再起動する方法にまとめています
この記事で確かめていないこと
- UPSをつないだ状態での実際のバックアップ時間(UPSを使った検証はしていません)
- ほかのメーカーのUPSの容量と時間(計算の方法は同じでも、表の値は機種ごとに違う)
- 停電を検知してPCを自動で終了させるソフトの設定
まとめ
- UPSは、つなぐ機器の合計のW(そのまま)とVA(W÷0.6)の両方を上回る機種を選ぶ。デスクトップPCなら正弦波出力
- オムロンBYシリーズの仕様書の表では、100Wの負荷でBY50Sは約15分、BY80Sは約40分、BY120Sは約63分
- 本体の価格に加えて、4〜5年ごとのバッテリー交換の費用がかかる。長い停電に備えるなら、VPSも比べる
本記事はメーカーの公表値にもとづく計算の例です。実際の選定は、メーカーの選定ツールや販売店で確認してください。


