副業の報酬で源泉徴収されるもの|対象の区分と、源泉徴収しない発注者・税額の計算
副業で記事の執筆やデザイン、プログラムの仕事を受けると、振り込まれた額が、契約の金額より少し少ないことがあります。原因の一つが源泉徴収です。源泉徴収されるかどうかは、仕事の種類(報酬・料金の区分)と、発注者が誰かで決まります。この記事では、国税庁のタックスアンサーと「令和8年版 源泉徴収のあらまし」をもとに、対象になる報酬、ならない場合、税額の計算を整理します。
(確認:国税庁 タックスアンサーNo.2792・No.2793・No.2795・No.2030[令和8年4月1日現在法令等]、「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第5章(令和7年9月1日現在の法令による)。確認日:2026年10月21日。クラウドワークスの設定は、同社の「みんなのお仕事相談所」に引用された公式のよくある質問の文面で、ヘルプの原文は確認できていません)
源泉徴収の対象になる報酬(個人が受け取る場合)
「源泉徴収のあらまし」第5章には、居住者に支払う報酬・料金のうち源泉徴収が必要なものが、区分ごとの表で載っています。副業で関係しやすいものを抜き出すと、次のとおりです。
| 区分(あらましの表) | 例 |
|---|---|
| 原稿の報酬 | 原稿料、監修料など |
| 挿絵・写真の報酬 | 書籍・雑誌の挿絵、印刷物に載せる写真 |
| デザインの報酬 | グラフィックデザイン(広告・ポスター・包装紙など)、パッケージデザイン、広告デザインなど |
| 著作権の使用料 | 書籍の印税、著作物の複製・翻訳その他の利用の対価 |
| 講演・教授・指導 | 講演料、技芸・知識の教授や指導の報酬 |
| 翻訳・通訳・校正・速記 | 翻訳料、通訳料、書籍・雑誌の校正料、速記料 |
弁護士・税理士などの資格を持つ人の報酬、モデルや芸能の出演料なども対象ですが、ここでは省いています(全体の一覧はタックスアンサーNo.2792)。
一方、プログラムの作成(EAやツールの開発、WordPressのカスタマイズなど)は、あらましの表の区分に見当たりませんでした。ただし、表には「著作権の使用料」が入っているため、契約で著作物の利用や権利の扱いを決める場合は、どの区分に当たるかが問題になりえます。個別の契約がどう扱われるかは、この記事では判断できないので、発注者や税務署に確認してください。
源泉徴収をしなくてよい発注者
タックスアンサーNo.2793には、報酬・料金の支払者が個人で、その個人が給与の支払者でないとき(または、常時2人以下の家事使用人だけに給与を払っているとき)は、源泉徴収をする必要がない、と書かれています。あらましでは、ホステス等への報酬だけはこの例外から除かれています。
- 発注者が法人(会社):対象の区分の報酬なら、源泉徴収される
- 発注者が個人で、従業員などに給与を払っている:対象の区分なら、源泉徴収される(給与を払っていれば、その給与に税額がない場合でも同じ、とNo.2793に書かれている)
- 発注者が個人で、給与を払っていない:源泉徴収されない
税額の計算
タックスアンサーNo.2795の計算式は、支払金額が100万円以下なら10.21%、100万円を超える部分は20.42%で、1円未満は切り捨てです。また、報酬と消費税が請求書で明確に区分されていれば、報酬の額だけを対象にしてよいとされています(区分されていなければ、消費税込みの額が対象)。
# 報酬・料金の源泉徴収税額(国税庁タックスアンサー No.2795 の計算式)
# 支払金額A が100万円以下: A × 10.21%
# 100万円超 : (A - 100万円) × 20.42% + 102,100円 (1円未満切り捨て)
# 消費税:請求書で報酬と消費税が明確に区分されていれば、報酬の額だけを対象にしてよい(区分されていなければ消費税込みの額)
from decimal import Decimal, ROUND_DOWN
def withholding(a):
a = Decimal(a)
if a <= 1_000_000:
t = a * Decimal("0.1021")
else:
t = (a - 1_000_000) * Decimal("0.2042") + 102_100
return int(t.to_integral_value(rounding=ROUND_DOWN))
cases = [
("原稿料5万円・消費税を区分して請求", 50_000, 5_000, True),
("原稿料5万円・消費税込み55,000円とだけ請求", 50_000, 5_000, False),
("デザイン料30万円・消費税を区分", 300_000, 30_000, True),
("国税庁の具体例:150万円", 1_500_000, 0, True),
]
for name, fee, tax, separated in cases:
base = fee if separated else fee + tax
w = withholding(base)
print(f"{name}: 対象額 {base:,}円 → 源泉徴収 {w:,}円 / 振り込まれる額 {fee + tax - w:,}円")
計算の結果(Python 3)
原稿料5万円・消費税を区分して請求: 対象額 50,000円 → 源泉徴収 5,105円 / 振り込まれる額 49,895円
原稿料5万円・消費税込み55,000円とだけ請求: 対象額 55,000円 → 源泉徴収 5,615円 / 振り込まれる額 49,385円
デザイン料30万円・消費税を区分: 対象額 300,000円 → 源泉徴収 30,630円 / 振り込まれる額 299,370円
国税庁の具体例:150万円: 対象額 1,500,000円 → 源泉徴収 204,200円 / 振り込まれる額 1,295,800円
150万円の例は、タックスアンサーNo.2795の具体例(204,200円)と一致しました。原稿料5万円の例では、請求書で消費税を区分するかどうかで、源泉徴収の額が510円違います(5,105円と5,615円)。請求書を作る時は、報酬と消費税を分けて書いておくと、源泉徴収の対象額が報酬の額だけになります。
なお、タックスアンサーには、令和9年分以後は「所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税」を源泉徴収する、と税目の注記があります。確認したページの計算式は上の1つだけで、令和9年分以後の率の違いは書かれていませんでした。
源泉徴収された税は、確定申告で精算する
源泉徴収された税は、所得税の前払いのようなものです。タックスアンサーNo.2030には、源泉徴収された所得税額が、年間の所得について計算した所得税額より多い時は、還付のための申告ができる、と書かれています。副業の所得の確定申告の要否は、副業のアフィリエイト・EA販売の確定申告にまとめています。受け取った報酬の明細や、発注者から届く支払調書などで、源泉徴収された額を控えておきます。
クラウドワークスで受ける場合
クラウドワークスの「みんなのお仕事相談所」に引用された公式のよくある質問の文面では、プロジェクト形式の契約で、ワーカーは「クライアントに源泉徴収をしてもらう」のチェックボックスで設定する、とされています。コンペ形式・タスク形式では設定できないこと、ワーカーが法人で登録している場合は設定できないこと、源泉徴収が必要な契約ではクライアントに源泉徴収を行う義務があることも書かれていました。仕事の区分が上の表に当たるか、発注者が法人か個人かを、契約の前に確かめます。
クラウドワークスのシステム利用料と手取りはMQL5・WordPressのスキルで副業の案件を探す(クラウドワークスの手数料)に、振込日の計算はクラウドワークスの振込日を計算する方法にまとめています。
この記事で確かめていないこと
- プログラムの作成や、著作権の扱いを含む開発契約が、源泉徴収の対象になるか(個別の判断が必要)
- クラウドワークスのヘルプの原文(相談所に引用された文面で確認)
- 令和9年分以後の源泉徴収の率の細部
まとめ
- 原稿・挿絵・写真・デザイン・著作権の使用料・講演・翻訳などの報酬は、源泉徴収の対象。プログラムの作成は、あらましの表の区分には見当たらなかった
- 発注者が個人で、給与を払っていなければ、源泉徴収されない
- 100万円以下は10.21%。請求書で消費税を区分すれば、報酬の額だけが対象になる
- 源泉徴収された税は、確定申告で精算し、多ければ還付される
本記事は国税庁の公表資料にもとづく一般的な情報であり、個別の税務の判断ではありません。具体的な取引は、税務署や税理士に確認してください。


