住所・電話番号を表示しない条件|バーチャルオフィス・私書箱・屋号の扱い(消費者庁Q&A)
特定商取引法の通信販売で、事業者の住所と電話番号を広告に表示しなくてよいのは、「消費者からの請求によって、広告表示事項を記載した書面または電子メール等を『遅滞なく』提供する」ことを広告に表示し、実際に請求があった場合に遅滞なく提供できる措置を講じている場合です。表示する場合でも、住所は「現に活動している住所」、電話番号は「確実に連絡が取れる番号」である必要があり、屋号のみ・通称のみの氏名や、私書箱のみの住所は認められません。個人事業者がバーチャルオフィスの住所・電話番号を表示する方法は、一定の条件を満たす場合に、要請を満たすと考えられるとされています。
この記事では、消費者庁の「通信販売広告Q&A」(確認日:2026年10月19日)のQ15〜Q20の内容を、質問ごとに整理します。法律の適用は、取引の内容で変わります。個別の判断は、消費者庁や専門家に確認してください。
1. 個人事業者でも、事業者名を表示するのか(Q15)
消費者庁は、事業を行う上で責任の所在を明らかにすることは不可欠なので、法人であれ個人であれ、氏名または名称を表示することが必要、と答えています。法人がウェブサイトや電子メール等で広告する場合は、代表者名または通信販売に関する業務の責任者の氏名も表示します。責任者は、担当役員や担当部長など、実務を担当する者の中での責任者を指し、必ずしも代表権を有する者でなくてもよい、と書かれています。請求で提供する旨の表示と措置を講じている場合は、これらの省略も可能です。
2. 屋号の表示でよいか(Q16)
答えは、屋号・通称・サイト名のみの表示は認められないです。「氏名又は名称」は、個人事業者の場合は戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号、法人の場合は登記簿上の名称を記載する必要がある、と書かれています。
3. 住所・電話番号は表示が必要か(Q17)
住所と電話番号は、事業を行う上で、トラブルが生じた場合や消費者から問い合わせがある場合の対応に備えるためのものです。そのため、「住所」は現に活動している住所、「電話番号」は確実に連絡が取れる番号を表示する必要があります。ただし、次の場合には、住所と電話番号の表示を省略することも可能です。
- 消費者からの請求によって、広告表示事項を記載した書面または電子メール等を、「遅滞なく」提供することを、広告に表示する
- 実際に請求があった場合に、「遅滞なく」提供できるような措置を講じている
「遅滞なく」とは、販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って、十分な時間的余裕をもって提供されることをいう、と書かれています。
省略する場合に、ページへ書く文面の考え方
消費者庁の説明の要点は、①請求があれば書面または電子メール等で遅滞なく提供する、と広告に書くこと、②請求の窓口(メールアドレスなど)を用意して、実際に遅滞なく返信できる運用にすること、の2点です。文面は、販売ページの方法に合わせて決めます。例として、次のような趣旨です(消費者庁が示した文例ではなく、筆者が要点から組んだものです)。
事業者の氏名・住所・電話番号は、ご請求をいただければ、遅滞なくメールでお知らせします。
ご請求は、(メールアドレス)までお送りください。
購入の申込みの前に、請求して回答を受けられるように、回答までの期間も、運用で守れる範囲で決めておきます。
4. バーチャルオフィスの住所・電話番号を表示できるか(Q18)
個人事業者が、バーチャルオフィス等の住所および電話番号を表示することについて、消費者庁は、住所は現に活動している住所、電話番号は確実に連絡が取れる番号である、という要件が満たされる場合は、バーチャルオフィスの住所・電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられると答えています。要件が満たされるとされる措置は次のとおりです。
- バーチャルオフィスの住所・電話番号が、個人事業者が通信販売の取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、個人事業者とバーチャルオフィス運営事業者の間で合意がなされている
- バーチャルオフィス運営事業者が、個人事業者の現住所と本人名義の電話番号を把握していて、両者の間で確実に連絡が取れる状態となっている
プラットフォーム事業者(取引の場を提供する事業者)の住所・電話番号を表示する場合は、これらに加えて、個人事業者の通信販売に係る取引の活動が、そのプラットフォーム上で行われることが条件、と書かれています。
ただし、個人事業者・プラットフォーム事業者・バーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実で、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、特定商取引法上の表示義務を果たしたことにはなりません。借りただけでは足りず、郵便・電話が届いて、対応できる運用が前提です。バーチャルオフィスを選ぶ時の確認点はEA・ツールを販売する時の特定商取引法の表記と住所にまとめています。
5. 私書箱の住所でよいか(Q19)
答えは、私書箱の表示は「住所」の表示にならないです。特定商取引法での「住所」とは、会社の場合には本店の所在地等、営業上の活動の拠点となる場所を指すものであり、私書箱を表示しても、そのような場所を表示したことにはならない、と書かれています。通信販売広告についてのガイドにも、現に活動していない私書箱等の住所のみを表示することは認められない、とあります。
6. 電話に24時間対応しなければならないか(Q20)
答えは、「一般常識として、夜間等営業を行っていない時間帯については、留守番電話等を利用することは構いません」です。ただし、意図的に、常に電話を取らない状態にしている場合などは、確実に連絡が取れる番号を表示していることにはならない、とガイドに書かれています。
7. 整理:選び方の目安
| 状況 | 消費者庁の説明から読み取れる方法 |
|---|---|
| 自宅の住所と電話番号を出したくない | 請求で遅滞なく提供する旨を表示して、体制をとる(Q17)。またはバーチャルオフィスの条件を満たす(Q18) |
| 屋号でビジネスをしている | 氏名の表示は、戸籍上の氏名または登記された商号。屋号のみは不可(Q16) |
| 私書箱を使いたい | 住所の表示にならない(Q19) |
| 電話を取れない時間がある | 夜間等の留守番電話は可。ただし意図的に常に取らないのは不可(Q20) |
全体の表示事項は特定商取引法の通信販売の表示事項一覧を参照してください。
まとめ
- 住所・電話番号は、請求で遅滞なく提供する旨を広告に表示し、その措置を講じていれば、省略できる
- 表示する場合は、現に活動している住所と、確実に連絡が取れる電話番号。私書箱のみ・屋号のみは不可
- バーチャルオフィスは、連絡先としての合意と、現住所・本人名義の電話番号の把握があり、確実に連絡が取れる場合に、要請を満たすと考えられる。いずれかが不誠実で連絡が取れなければ、義務を果たしたことにならない
- 夜間の留守番電話は可。意図的に常に取らない状態は不可
本記事は消費者庁の公開資料(確認日:2026年10月19日)にもとづく一般的な情報であり、法律の助言ではありません。個別の判断は、消費者庁や専門家に確認してください。


